地域公共交通シンポジウムin 旭川

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~北海道における持続可能な交通体系の構築に向けて~

6月12日(月) 旭川グランドホテルで開催されました。
主催は、国土交通省北海道運輸局です。


開会挨拶(国交省北海道運輸局次長 大立康祐氏)、開会挨拶(上川総合振興局長 渡辺昭彦氏)に続き、講演とパネルディスカッションの2部構成で行われた。

開会挨拶

大立北海道運輸局次長

開会挨拶


渡辺総合振興局長

Ⅰ部の講演は、

  1. 話題提供1 『地域公共交通における最近の動向、国の支援策について』(国土交通省総合政策局公共交通政策部交通支援課長 杉山 忠継氏)
  2. 話題提供2 『JR北海道の現状等について』(国土交通省鉄道局鉄道事業課長 大野 達氏)
  3. 基調講演  『受益と負担の関係から考える鉄道存廃の判断基準』(流通経済大学経済学部教授 板谷 和也 氏)
  4. 事例発表1 『鉄における地域鉄道線への取り組みについて』(近畿日本鉄道株式会社総合企画本部計画部長 福嶌 博 氏)
  5. 事例発表2 『平成23年7月新潟・福島豪雨から6年「只見線」復活に向けた福島県の取り組み』(福島県生活環境部長 尾形 淳一 氏)
  6. 事例発表3 『気仙沼線・大船渡線のBRTによる復旧』(東日本旅客鉄道株式会社執行役員総合企画本部復興企画部長 大口 豊 氏)

で、Ⅱ部のパネルディスカッションは、板谷氏をコーディネーターに、福嶌、尾形、大口、大野の4氏をパネリストとなり「北海道における持続可能な交通体系の構築について」と題してパネル討論が行われ、各地域における取り組みのなかで工夫したことや苦労したこと、北海道へのメッセージなどが示唆された。

杉山氏

杉山氏は、地域公共交通に関する制度が変更され、

  • 平成10年代前半に鉄道事業、バス事業等の需給調整規制が廃止され、路線の休廃止が容易になった。
  • 平成18年に道路運送法が改正されコミュニティバスや乗り合いタクシーなどの普及に資する規制が適正化され、市町村バスやNPOによるボランティア優勝運送が制度化された。
  • 平成19年に地域公共交通活性化法が制定され、市町村による計画造が制度化された。
  • 平成25年に交通政策基本法が制定され、交通政策の基本理念(交通機能の確保・向上、環境負荷の軽減、様々な交通手段の役割分担と連携、関係者の連携・協働)、国・地方公共団体・事業者等の責務等が規定された。
  • 平成26年に地域公共交通活性化法再生法が改正され、まちづくりと一体となった持続可能な地域公共交通ネットワーク(「コンパクト+ネットワーク」)の形成を促進している。

と話され、

  • 国・地方公共団体・事業者の役割
  • 地域公共交通の活性化・再生のポイント
  • 地域公共交通確保維持改善事業と連携の事例

などが示された。

大野氏

大野氏は、JR北海道を取り巻く厳しい経営環境について、いくつかの指標を示すとともに、これまで行ってきた支援策、JR単独では維持困難な線区につい紹介があった。
また、「地域公共交通活性化法再生法」や他の地域における活性化に向けた取り組みの事例も紹介された。

板谷氏は、JR北海道問題の論点として、次の5点、

  1. JR北海道問題 そもそも何が問題か
  2. 存廃の基準についての考え方
  3. 不採算路線を維持する方策とは
  4. 鉄道が廃止されると町は衰退するか
  5. 道民は、住民は、行政は、何をすれば良いか

板谷氏

を掲げ、「鉄道が本当に必要かどうか」「路線維持のための費用を誰が負担すべきか」と問い掛ける。
氏は、鉄路の存続(守備範囲)は、①「鉄道運営に必要な全ての費用を、運賃収入でまかなえる」か②「必要な費用が運賃収入ではまかなえない物の、他の交通手段では帰って輸送効率が悪くなる路線」までで、③「必要な費用が運賃収入でまかなえない植え、他の交通手段の方が効率的に運行できる路線」は廃止すべきと言う。
また、交通は、移動手段(派生的需要)である。手段は、鉄道に限らず、自動車でもバスでも航空でも船でも良い。鉄道とバスの利便性を比較すると必ずしも鉄道の方が高いわけではない。
「鉄道がなくなると地域が衰退する」は誤り。鉄道の存廃に関係なく元気な街は元気。鉄道の社会的な影響が小さい路線で廃止されている鉄道の存廃は街の盛衰に影響しない。
更に、「鉄道は社会的インフラだから赤字かどうかに関わらず維持されるのが当然」との意見があるが、国が維持する必要があるのは幹線ネットワークを構成する路線である。こうした路線は鉄道で維持すべきだが、利用が少ない場合はバスの方が効率的である。また、「ガソリン税の一部を鉄道への補助に用いる」というのも自動車ユーザから支持が得られるか。そのほか、観光鉄道や地域鉄道は国が支援してはいけない路線である。

そのような前提で、地域にあった交通手段を選ぶ方法、費用回収の方法、逆転の発想、国・地元自治体・住民の役割について述べられた。
冒頭の5つの論点に対する回答例として、

  1. 各都市をつなぐネットワークがどうあるべきか
  2. 存続させることが社会的に効率的な路線を選ぶ
  3. 地方自治体の予算配分の問題
  4. 鉄道が役割を終えている場合は衰退しない
  5. 鉄道の役割と維持費の負担者を再検討すること

を上げ、

  • 現状維持は衰退の道と心得よ
  • 論理と納得がなければ支援は不可能
  • 敗戦ありきが駄目なように、存続ありきもダメ
  • 必要なのは地元のニーズに合った交通ネットワークの再構築

と纏められていた。以下は、私見であるが、
トータル(平均)的に捉えると氏の主張は間違いないだろうと思いながらも、鉄路の存廃を「必要費用」と「運賃収入」との比較で判断するには無理がないだろうか。
必要費用は経済外費用が計測され、運賃収入に経済外効果が算入できれば問題ないが、経済外費用、経済外効果は評価が難しい。しかし、それを無視するのでは極論過ぎる。
そのことが理解できなければ、「国の支援」、「ガソリン税の一部を鉄路の支援に充てる」ことなどは不可能であろう。
もう1点は時間軸をどうみるか、JRを巡る経営環境が、これまでの10年、20年とこれからの10年、20年とでは進歩の度合いが全く異なる。異なることは想定出来るが、どのようになるかは見当がつかない。
車の自動運転が可能になれば、現在の交通弱者とされる老人・子供の問題は解決されるが、経済的にそうした車を所有できるかどうかといった経済難民が派生しないか。そうした場合の、交通手段の確保を考慮しなくても良いか。
といったことが、頭を過ぎった。

福嶌氏

福嶌氏は、近鉄は2府3県にまたがる501.1km(北海道は、2,568.7km)の路線網を有し、路線延長はJRを除く民鉄で第1位と紹介し、会社の概要を示された。
地域鉄道線の路線を取り巻く環境が悪化し、自力での運営コスト削減などによっても抜本的な改善には至らず、事業形態の見直しが必要であった。

  • 平成15年4月に北勢線(三重県)を三岐鉄道に事業譲渡した
  • 平成19年10月に伊賀線・養老線(三重県・岐阜県)を分社化、上下分離に
  • 平成27年4月に内部線・八王子線(三重県)を公有民営方式に移行し、BRT化による「四日市あすなろう鉄道」の運行を開始した
  • 平成29年4月に伊賀線を公有民営方式に移行した(上下分離方式から公有民営化)

が紹介されたが、内部・八王子線のBRT化に向けた取り組みの経緯を詳しく解説された。

尾形氏

尾形氏は、只見線のPR(写真紹介)に続き、只見線復旧に向けた地元の取り組みが紹介された。

  • 只見線応援団の設立(現在6万人が名を連ねる)・寄付金の募集
  • 奥会津5町村と魚沼市で「只見線に手を振ろう条例」制定(平成27年3月)
  • 県、会津17市町村、新潟県、魚沼市、関係団体で「JR只見線復興推進会議」、県、沿線7市町村で「JR只見線復興推進会議検討会」を設置し、只見線の復旧方法や利活用促進、只見線を活用した地域振興策等の具体的な検討

を行った。検討は、

  1. 上下分離方式による鉄道復旧案…只見線を活用した地域振興を図ることができるものの、多額の復興費と年間の維持管理経費が派生
  2. バス転換案…地元負担は発生しないものの、地域のシンボルである只見線が失われる

住民懇談会を開催するなど、検討を重ね、平成29年3月27日「JR只見線復興推進会議」において、只見線を上下分離方式により復旧することを地域の創意として決定された。
今後は、県、沿線自治体、地域作り実践者等で構成する只見線利活用プロジェクトチームを設立し、年内を目途に計画を策定し、2021年の全線開通を目指すと決意を述べられた。

大口氏

大口氏は、東日本大震災による津波の被害で気仙沼線の34%の路線、大船渡線の35%の路線が流出した。
被害が甚大かつ広範囲である上、Level1程度の津波でも安全確保が困難な地域の存在、まちづくりに伴うかさ上げを待った後の復旧、増加費用の負担の議論などを考えると鉄道復旧には相当の期間が必要になる。
そのため、BRTの導入を図り早期の交通機能の回復、震災復興への貢献、地域の実情に合った持続可能な交通機関の整備を図ることにした。
BRTによるの特徴は、

  1. 早期復旧
  2. まちづくりに合わせた柔軟な駅設置・運行ルート
  3. 専用道路整備による速達性及び定時性の確保
  4. 津波避難時の安全確保
  5. 利便性の向上

を挙げ、現況を紹介された。
このBRTによる本格復旧(持続的な地域の基幹交通)が2016年度の「グッドデザイン金賞」の栄に浴した。
「鉄道か公共交通化の二者択一ではなく、地域の足となる公共交通を維持していくための一つの選択肢を示した意義が大きい。」とされた。

第Ⅱ部 パネルディスカッション

コーディネーター

パネリスト

取り組みに区付したこと・苦労したこと
福嶌氏…伊賀鉄道は関係者が多岐(2県7市町)で合意を得るのは大変であるが、大垣市に窓口を置き、岐阜県がそれを支えた。あすなろ鉄道は、地域の公共交通の絵が描けるBRTは収支がトントンになるとバス路線の提案をした。
尾形氏…金額が膨大であったが、地元の覚悟がしっかりしており、沿線地域の同意が大きかった。大災害からの復興という県全体の意向・理解があった。住民説明会なとを通じ、自治体としての方向性を導いた。
大口氏…復旧に多少の時間は掛かるし、立派なモノを作るとお金も掛かる。鉄道の復旧には時間が掛かることを説明するのに時間を要した。無くなったところからのスタートとなったが、地域の公共交通整備には100億円単位のお金が掛かる。
大野氏…「決断」、「覚悟」というのは大変である。住民の考え方が組長に通じていることが重要。困っているのは何なのかが、議論のスタートになる。

北海道における交通体系の構築に向けたメッセージ
福嶌氏…必要なのはトップの決断。前例がないことには不安感がある、代三者のような人が入って勉強することが大切。自分に都合の悪い情報は出さない、相手の情報だけを得ようとする傾向があるが、全ての情報を晒し(オープンにして)議論をすること。
尾形氏…復旧が目的ではない、活性化が目的である。自分たちでやれることをやっていく(住民が一人でも多く)。皆さんに協力して頂くには、協力してもらえるように。自分たちでできることから一歩一歩前進する。
大口氏…何を選択するにしても目的が合致すること。「活かす」「残す」は地域の住民である、自分たちが使うチャンスである。観光では無理。車の自動運転、AI、ICTも含め交通体系の在り方を見詰め直す必要がある。
大野氏…自分たちで「肝」を見つけて。モノマネではなくオーダーメイドを。実態を把握し、自分たちの問題として

4時間のシンポジウムであったが、多少時間がズレ込んだ。
開場からの意見聴取はされなかったが、いろいろな事例の紹介などがあり、余井辺鏡になった。

地域公共交通シンポジウムin 旭川」への2件のフィードバック

  1. 日頃あまり深く考えることのないテーマですが、改めて地域公共交通のあり方を考えさせていただくいい機会となりました。
    ここ九州の場合、山間部が多く海岸線を中心に鉄道網が整備され、九州山地を横断する鉄道ルートは2つ。自動車道では高速も含めれば7ルートでしょうか。このルートには定期バスも運行されています。鉄道ルートは、ほとんど国道や県道と並走しているため、鉄道の乗車率は低く、JR九州においても鉄道事業は採算が取れておらず、ホテルなどの他事業でもっているそうです。
    昨今の高齢者による自動車事故の多さを考えれば、公共交通の今後を考えることは重要なテーマであり、自動運転車より、運行ルートが予め決まっている鉄道やバスの方が、技術面だけでなく法的にも自動運転の普及は容易であり、特に鉄道は、運転手や駅員の無人化等による経済面や弱者救済効果も高いのではと感じました。
    また、日本経済(出張組や観光客など)を下支えする交通事業と地域住民の生活を守る交通事業とが双方両立する新しいモデルが創造できないものかという新しい視点も芽生えました。
    話は変わりますが、インフラ事業という枠組みでは、通信業界も似たようなもので、携帯普及率向上に伴い、いわゆる黒電話の利用台数が減っているにも関わらず、国内の電柱や通信線の数は変わらず、これを維持する費用は莫大であるため、これまでNTT独占であった通信事業は他業者へリセールされ最近はやりのクラウド事業者により維持されています。クラウドブームがなければ廃線といった鉄道事業と似たような運命をたどったのでしょうね。

    • 鉄路の問題は、大きな問題と捉えています。
      少し時間を掛けて、自分なりに整理をしたいと考えています。

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